事業実施の概略


  特定非営利法人愛知生物調査会は、愛知県を中心に鳥類をはじめとする生物全般の分布・生息状況を調査把握することで、人間の開発行為が自然環境に及ぼす問題の改善、解決を図り、良好な自然環境の維持に資するとともに、併せて持続可能な人間社会の形成に寄与することを目的とし、次の事業を実施した

1. 愛知県沿岸部のシギ・チドリをはじめとする鳥類の生息調査。西三河野鳥の会と共同で調査を実施し、シギチドリネットワークにデータを提供した。

2. 額田・岡崎・西尾・吉良・幡豆地区の野鳥、および生物全般の生息調査。風力発電計画に対する基礎データ蓄積のため、会独自で調査を実施した。

3. 西三河地域を中心に、県内全域でタカ類の渡り調査、越冬調査、および繁殖調査を、基礎データ蓄積のために会独自で実施した。

4. 西三河地区を中心としたフクロウの繁殖場所整備と繁殖調査を会独自で継続し、基礎データの蓄積を実施した。

5. 渥美半島の鳥類調査を、渥美自然の会の依頼により実施した。

6. 会独自の活動として、県内における鳥類全般の生息状況調査と、その解析等を実施した。

7. 会独自の活動として、ブッポウソウ、オシドリ等の営巣場所の創設をした。

8. −中部電力南知多風力発電計画に係る鳥類の春季秋季渡り調査を実施−
中部電力鰍謔閨A潟eクノ中部を通しての依頼で、同社が愛知県南知多町地内に建設を計画している風力発電施設に係るアセスメント調査の一環として、2005年秋季渡り、2006年春季渡りの現地調査を行った。より詳しい野鳥の生態を把握するため、新しい調査方法についての提言を行い、これを採用した。同時に中部電力が各地に計画している風力発電施設建設計画において、野鳥等と野生生物との干渉を避けるため、設置場所の選定、調査の方法等を提言した。

9. 「愛知県野鳥保護連絡協議会」の構成団体の立場で、2007年5月に開催される「全国野鳥保護のつどい」の準備事業に参加し、プレイベント事業「愛知の野鳥2006」の作成を担当。

10. 「愛知県野鳥保護連絡協議会」構成団体の立場で、愛知県が実施中の「レッドデータ見直し事業」に参加し、鳥類の調査とまとめを担当した。

11.愛知県が作成した「愛知県希少野生動植物リスト」(2008年)、「レッドデータブックあいち2009」に対し、鳥類についてのリスト作成とブックの執筆を担当した。また、2010年3月に愛知県がブックの概要版として「絶滅のおそれのある野生生物 レッドデータブックあいち2009の概要」を作成・出版するにあたり、鳥類部分の作成を担当した。

12. 愛知県環境部環境政策課環境調査センターが実施した「愛知県希少野生動植物実態調査」の中で鳥類を担当し、「レッドデータブック2009」以降の追加情報の収集を行なった。同時に、県内に生息する全ての野鳥の中から、観察が比較的容易で愛知県の環境を代表する20種を選定し、種毎の解説文を執筆した。

13. 愛知県環境部の依頼で、愛知県内におけるコノハズクの生息調査を実施した。

14. 愛知県環境部が、身近な生き物に対する県民意識の向上を図るために作成した「あいちの身近な野鳥」に対し、写真の収集と原稿の作成した。

15. 移入・在来生物が人間生活に及ぼす問題について、愛知県環境部自然環境課が作成した「愛知県の移入動植物」(別名:「ブルーデータブックあいち2012」)に対し、その鳥類部分を担当した。県内における移入鳥類のリストを作成するため、愛知県と西三河野鳥の会、および県内の組織や個人が所有する過去40年以上の移入鳥類に関する記録情報を収集し、データベースを作成。これを基に愛知県の注目すべき移入鳥類9種を選定し、不足部分については現地調査を行い、データベースの補足を行なって原稿を作成した。

16. 愛知県環境部環境政策課環境調査センターが実施した「愛知県希少野生動植物実態調査」の鳥類部分と、県内に生息する全ての野鳥の中から、観察が比較的容易で愛知県の環境を代表する20種についてデータベースの作成と解説文の作成を担当した。「レッドデータブック2009」以降の追加情報収集では、2009年9月以降に県内で確認された「レッドデータブック2009」掲載種、およびそれに準ずる種の記録を収集してデータベースを作成した。環境を代表する20種については、愛知県と西三河野鳥の会、および個人の所有する過去40年以上の記録情報を収集してデータベースを作成し、不足部分については現地調査を行った。

17. 中日本高速道路鰍フ新東名高速道路建設予定地周辺で、道路建設が直接野鳥に及ぼす影響を調査するため、大井野地区の2地点にて単位時間に100メートル四方の範囲の内と外で確認される全ての野鳥種、数、および道路予定部分を通過する全ての野鳥種、数、その通過高度について、2009年5月から2010年3月まで、1地点1ヶ月あたり32回の調査を行った。

18. 中日本高速道路鰍フ新東名高速道路建設予定地周辺に生息するハチクマの営巣確認のため、非繁殖期に3地区の古巣確認調査を行った。

19. 中日本高速道路竃L田工事事務所の新東名高速道路建設管内で、同事業の里山環境保全委員として参加し、生態系に配慮した高速道路づくりのための提言を行い、工事の各所にその成果を反映した。

20. 新東名高速道路建設予定地周辺に生息する夜行性鳥類、およびカワセミ類の調査事業
豊田・岡崎地区の新東名高速道路建設予定地周辺に生息する夜行性鳥類の生息状況確認のため、予定地を3地区に区分し、それぞれの地区を各2名が担当して夜間の生息調査、およびカワセミ類の生息調査を行った。夜間調査においては、調査期間中の各季節に夜行性鳥類の活動適期を選定し、日没1時間程度前から日の出までの夜間に、予定地周辺に生息する鳥類の生息調査を行った。カワセミ類の調査においては、夜間調査の補足調査も兼ねてカワセミ類の確認及び巣穴等の確認を行った。その他、夜行性鳥類及びカワセミ類の生息状況について情報収集を行った。夜間調査において確認された哺乳類についても記録した。

21. 中日本高速道路竃L田工事事務所は、新東名高速道路建設の中で、ここに生息する生物の生息環境保全のため、周辺に生息する生物調査を実施しているが、その中で調査時間の特殊な夜行性鳥類調査の一部につき、当会が担当して実施した。これら調査の他に、ヤマセミの繁殖回復対策鳥類の壁面利用対策鳥類に対する人工巣の設置、およびカワセミの営巣支援システム「とりす工法」に提案を行った。

22. 豊田市のサシバ調査
豊田市自然観察の森の依頼で調査協力を行った。(報告書参照)

23. 愛知県の「西三河生態系ネットワーク」に参加し、野鳥を含む自然環境の保全にかかる提言を行った。

24. 愛知県の「知多半島生態系ネットワーク」に参加し、野鳥を含む自然環境の保全にかかる提言を行った。なお、主にタカ類をはじめとする繁殖、渡り等の生態調査時、同時に複数の位置で行う場合の連絡手段として無線機が不可欠となるため、今年度の予算でトランシーバー5台を購入した。

25. 国交省豊橋河川事務所の「矢作川流域圏懇談会」に参加し、野鳥を含む生態系保全にかかる啓蒙と提言を行った。

26. トヨタ自動車鰍ヘ現在、豊田市下山地区と岡崎市北西部間において、愛知県企業庁を主体としたテストコースを建設中である。同社が保全措置の対象となる鳥類調査を行う中で、一般市民を対象にした紹介冊子の作成を行なっているが、これに掲載する地元で撮影された野鳥写真を求められ、提供した。

27. 人間生活が野生生物の生息に及ぼす影響を把握するため、現状における鳥類生息の基礎資料を収集し、テーマを定め、各テーマごとに正会員、および協力者が可能な範囲で調査を行った。

28. 自然保護思想の啓蒙をはかるため、観察指導を求められた市民団体に対し、野鳥観察会の企画と指導を行った。

−以上−