
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
2008年 愛知県コノハズク繁殖調査報告 − まえがき −
愛知県内における2008年のコノハズク繁殖期生息状況について、5月22日から7月17日までの間に、調査回数合計23回以上、延べ36名以上の人員で延べ走行距離4,000km以上の現地調査を行った。 準備期間がきわめて短い中で調査を開始したために、近年の情報収集が少なく、調査マニュアル・使用機材等も不備な状態で調査を進めることとなったが、過去の記録と情報に加え、前回1998年の調査を担当された東三河野鳥同好会の適切な情報提供により、効果的に現地調査を実施することができた。 − 繁殖期以外の生息状況 − 県内におけるコノハズクの記録は、主に秋の渡りの9月中旬から10月末までに最も多く報告されており、その大半は窓ガラスなどへの衝突事故や衰弱で保護されたもの、都市公園や沿岸部の緑地などで渡り途中の個体が観察されたもの、および標識調査において捕獲確認されたものである。また、春の渡りでは、4月の中旬から5月の中旬までに、渡りの途中と思われる個体の鳴き声が本来の繁殖環境ではない沿岸部や都市近郊などで確認されている。 しかし、近年(2004年以降)は春秋共に渡りの季節に確認された記録は極めて稀になっている。渡りの季節に県内を通過する個体数の減少が原因と考えられることから、コノハズクの減少は愛知県のみならず、国内における生息数が減少している結果ではないかと危惧される。 − コノハズクの繁殖期間 − 県内における繁殖期間は、およそ5月下旬から7月中旬までと考えられる。県内では繁殖地において7月中旬、および8月初旬まで鳴き声の確認記録があるが、8月中旬に記録された場所では繁殖期の正式な記録が無い場所での記録もあることから、繁殖を終えた個体、あるいは、巣立ちした個体が繁殖地から渡り前の移動を行って鳴いている可能性も考えられる。 今回の調査は、県内におけるコノハズクの繁殖状況を明らかにすることが目的なので、繁殖期間として大きな誤りの無い5月下旬から7月中旬までの間に実施した。 − 調査範囲 − 今回の調査範囲は、車での侵入が可能な地域のほぼ大半を前提とし、前回調査にて繁殖期の生息が確認されている地域の全て、及び生息可能と推測される全ての地域を網羅した。 − 調査方法 − 一回の調査でより広範囲の調査を行うために、移動は全て自家用車で行った。地図上及び走行中に地形や植生、人工物や人工光などの環境を見ながら調査地点を決めて停車し、周辺で見通しの良い場所に移動して鳴き声の確認を行った。 調査の大半で機器を使用し、鳴き声の誘引を行った。調査地点の一部(段戸裏谷等)では、森の中を徒歩で移動しながら鳴き声の観察を行った。 調査に適した時間は日没から日の出までの間を基本としたが、調査地の大半は深山であるため、標準の日没より早い時間から調査を始めた場合もあり、この時間帯に鳴き声の誘引に成功した例もある。 各地域の調査回数は1回から複数回実施しており、特に前回確認された場所で今回確認されなかった地域や、環境の良い地域、1回目調査時の天候が不良(小雨等)の場合は2回以上実施した。 − 結果 − 今回の調査で繁殖期の生息が確認されたのは7ヶ所の地点であった。 確認された箇所は、全て前回の調査で繁殖期の生息が確認された地域にあったが、前回と全く同じ場所で確認ができたのはその約半数であり、他はかなり離れた場所で確認されていることから、毎年同じテリトリーに飛来して繁殖するものとは限らないようである。 また、前回の調査まで生息の確認があり、今回の調査で確認がされなかった地域として、2地域があげられる。この2地域については複数回の調査を行い、生息の確認に有効な機器による鳴き声の誘引を行ったが、生息の気配は認められなかった。両地域共に、山腹を貫くトンネルと整備された幹線道路があり、夜間高速で通行する車両が認められること、道路や集落の街路灯も多く夜間の人工光の量は今回確認のあった地域とは明らかな差があることから、繁殖地は消失した可能性が高いと考えられる。 − 考察 − 過去の観察記録や調査結果に今回の調査結果を加えてみると、県内におけるコノハズクの繁殖環境は、以下の4項目の条件全てを満たす必要があると考えられる。 [1] 山腹や山頂に道路建設や農地開発、観光開発などが行われていない、手付かずの山塊にある山腹や山麓であること。 [2] 周辺1km以内に民家や集落が無い場所。あるいは、集落が小さく、水銀灯などの強い人工光が無く、夜間が十分静かで十分暗いこと。 ダムで水銀灯などがある場合は、強い光源は一つのみであること。周りが広大で高低差が大きいこと。および、通り抜ける道路が無いこと。 [3] 繁殖地の周辺におよそ50km/hを超える速度で車が走る道路が無く、夜間の交通量も1時間に数台程度以下であり、街路灯が無いか、極めて弱い光であること。 山麓に高速で走る道路がある場合は、道路に面する距離が短く、道路からの光や音が完全に遮蔽されていること。 [4] ある程度の面積を有する、落葉広葉樹と針葉樹の大木の混交する自然度の高い林があること。 里山の環境では、針葉樹の古木が林立する社寺林等の周辺に自然度の高い二次林があること。 上記条件の全てが不可欠である理由として、今回の調査で繁殖期の生息確認ができた7ヶ所は、いずれも山頂や山腹に車の通る道路や開発行為のなされていない大きな山塊に位置していることが挙げられる。例えば、山頂や山腹に道路建設や農地開発、観光開発がされている茶臼山高原道路のある山塊群や、豊田市稲武地区では、他の条件が全て整っている環境が残っていても、現在はコノハズクの生息が確認されなくなっている。 段戸裏谷には生息に良好な原生林が残されていると考えられるが、1984年の春を最後に記録が途絶えている。原生林の内外で進められた道路整備や環境破壊が、コノハズクの生息を妨害しているものと推測される。コノハズクを愛知県の鳥として全国に知らしめた鳳来寺山(682m)も、パークウエィの開通を境にコノハズクが姿を消している。 コノハズクの餌として重要なものは、昆虫類やムカデ類などの節足動物であり、今回の調査でも営巣木の横でムカデを咥えた親鳥の写真が撮影されている。主に夜間、こうした動物を捕食するためには、餌となる動物が発する極めて小さな音や光の信号を確認することが必要となる。人工の光や騒音はこうした信号の確認を撹乱する可能性がある。 コノハズクの生息環境には、小動物の生息に適した湿潤で落ち葉等の栄養豊かな林床が不可欠であるが、道路建設や開発により長年築かれてきた林床の環境に変化が生じ、小動物の生息環境に悪化をもたらしていることが考えられる。昆虫類をはじめとする小動物は光の影響を受けやすく、多くの昆虫は正の走光性を示すことで、人工光の多い集落や道路に誘引される。特に交通量の多い道路では、周辺の昆虫が夜間の道路(ヘッドライトや街路灯)に誘引され、通過する車によって永遠に殺され続けることになる。大小各種の昆虫が多量に消失することで、これらを餌とする小動物はさらに減少し、コノハズクの餌も減少することになる。 − その他 − 今回の調査はコノハズクの生息確認を目的として実施されたが、同時に各種の夜行性生物や生息数の少ない種の確認がされているので、以下にその概要を示す。 1. アオバズク 東三河山間部で合計5羽確認 2. アカショウビン 東三河山間部で合計2羽確認 3. アナグマ 豊田市山間部で合計2頭、東三河山間部で合計3頭確認 4. イノシシ 県内山間部で合計3頭確認 5. オオジシギ 豊田市藤岡地区で1羽確認 6. オシドリ 豊田市旭地区で1番い確認。他に2羽確認 7. カモシカ 豊田市旭地区で1頭確認 8. キツネ 県内山間部で合計7頭確認 9. シカ 東三河山間部で5頭確認 10. ジュウイチ 東三河山間部で合計5羽確認 11. トラツグミ 県内山間部で合計9羽確認 12. ノウサギ 東三河山間部で合計10羽確認 13. ハクビシン 県内山間部で合計4頭確認 14. ムササビ 豊田市旭地区で1頭確認 15. ヨタカ 県内山間部全域で合計33羽確認 −以上− |
