第二東名高速道路
「里山生態系保全検討」における自然環境保全対策の提案


2011年6月17日
提案者 愛知生物調査会

鳥類の壁面利用対策


− 壁面利用対策の考え方 −

 里山生態系保全検討委員会では、「レッドデータブックあいち」や「里山生態系保全の考え方〜里山猛禽類を指標として〜」などに基づき絶滅危惧種及び猛禽類の調査・保全対策を行っている。
 しかし、里山の生態系を保全するには、それらの猛禽類や絶滅危惧種のみを保全するだけでは不十分と考え、生態系の構成種全体にも目を向けて、その重要性を考えた取り組みを実施している。
 そのことを踏まえ、道路建設によって新たに生まれる壁面を利用して生き物が棲める空間を創出できないかを検討した。


− 既存事例 −

 従来の道路構造である国道23号線バイパス安城地区のコンクリート壁面は隙間なく造られ、100mmの丸い水抜き穴が施されている。一見無機質的空間のように見えるが、?目のわずかな隙間に植物も生え、水抜き穴を利用して、現在ではムクドリやスズメが巣穴として利用し繁殖している。(Fig.1)

Fig.1 壁面の水抜き穴を繁殖利用するムクドリ・スズメ

 また、同道路の安城地区南壁面は高架構造のため、従来の工法とは違ってコンクリートブロックを積み重ねた工法を採用している。そのコンクリートブロック間に20mm〜30mmの隙間ができていているため、水抜き穴を必要としない。しかし、その隙間に植物の種が飛散し根付いている。また、この隙間を利用してガゲジグモの仲間のクモ類が網を張って住み着いている。(Fig.2)

Fig.2 壁面の隙間に根付いた植物

 この他、東海環状線豊田市琴平地区の高速道路壁面では、カワセミ用(径200mm)4カ所、ヤマセミ用1カ所(径300mm)の巣穴を創出した試みが行われた。しかし、中に入れた土質や雨水による土の流失などで、両種の利用は認められなかった。その後カワセミ用の穴の内部の土を掻き出し、内部に木屑を入れてフクロウの巣穴用に設置し直したところ、この巣穴で2009年にフクロウが繁殖して2羽のヒナを育てることに成功した。(Fig.3)

Fig.3 壁面につくった穴を利用して繁殖したフクロウ


− 対策の内容 −

 壁面に隙間も水抜き穴もない構造物では、生き物が棲める空間はなく、生き物にやさしい建造物にはなっていない。(Fig.4)

Fig.4 壁面に隙間も水抜き穴もない構造物

 先の例からも明らかなように、僅かな隙間を創出することにより、道路壁面を色々な生き物にやさしい建造物に変えることは可能と考える。隙間さえあれば、そこに植物が生えたり、小さな生き物が棲みついたりすることができ、隙間が大きければ大きいほど、それに伴った大きさ、あるいは量の生き物が棲めることになる。
 壁面に穴を開けたり窪みを造ったりすることは、鳥の営巣空間を創出することとなり、生態系を構成する多くの生きものにとって、より有効と思われる。以下に対策の詳細を述べる。

対策の内容−1  鳥巣用コンクリート箱

 既存のコンクリート壁に鳥巣工法を取り入れたブロックもあるが、穴の大きさや内部の構造に改良の余地が多くあるほか、当該道路への導入を想定した場合、進捗している工事状況や施工場所など問題が多く、実施は困難と考えられた。(Fig.5)

Fig.5 鳥巣工法を取り入れたブロック

 そこで、それらに代わる対策として道路構造物の上に直接鳥巣を置く方法を検討した。対象種はフクロウである。フクロウは本来樹洞で繁殖する種類だが、自然の樹洞が減ったことなどから、近年個体数が減少傾向にあるとされ、愛知県では準絶滅危惧種(レッドデータブックあいち2009)とされている。本種は巣箱を良く利用することから、当該対象は有効と考えた。
 鳥巣の構造は1m×1mの正立方体(内部60cm×60cm)のコンクリートの箱にフクロウの体に合わせ、横12cm×縦20cmの穴を内部底辺から30cmの位置に開け、これを道路壁面上部に設置する方法である。(Fig.6)

Fig.6 鳥巣用コンクリート箱

対策の内容−2  低い壁面の活用

 比較的低い壁面(3m以下)には、1m〜2mのところに横20cm×高さ10cm×奥行き10〜15cmの木製ブロックを配置してコンクリートを流し込み、乾いた後にこのブロックを取り外し、壁面に窪みを付ける工法も有効である。これはカワガラス・セキレイ類・オオルリ・キビタキなどが利用する可能性がある。この工法は東海環状線の新東名とのジャンクション近くに施工してあるが、ジャンクション工事のために環境が変わってしまい、現在のところ鳥類の使用は確認されていない。(Fig.7)

Fig.7 鳥巣工法を取り入れたブロック

 しかし、環境が変化しない場所など、施工場所を考えれば有効であると考えられる。また、各種の蓋を付けることによってカラ類だけでなく、多様な鳥類の繁殖場所になる可能性もある。(Fig.8)

Fig.8

対策の内容−3  既存の水抜き穴の利用

 既に出来上がっている壁面の水抜き穴を利用して、カラ類の繁殖場所を提供する。水抜き穴にムクドリやスズメなどが繁殖利用することは先に述べた。しかし、山地を通る第二東名においては、ムクドリやスズメは少なく、利用する可能性は低いと思われる。逆に山地に生息するカラ類が繁殖する可能性は高いが、カラ類用では穴が大きすぎる。そこで、水抜き穴にカラ類用の穴の開いた蓋をつけることによって、対策とする。既存の水抜き穴の径に合う蓋を造るだけである。(Fig.9)
 通常の場合、水の流出は僅かしかなく、蓋に設けた水抜き穴で十分であり、大量の水が流出したときには、水圧で抜け落ちる構造にしておけば何ら問題はない。

Fig.9 既存の水抜き穴の利用

−以上−